子どもが夢中になって取り組む遊びには、本当に豊かで、すごく大事なことが含まれています。

渡辺:小中高を含めた今後の新しい学習指導要領には、自分で問題を解決する力、学んだことを使う力、困難があった時に試行錯誤する力をつけていかないと子どもは育たない、その力を養うのにいちばん大事なのが幼児教育だという話が出ています。
言われたことだけをやっているのでは、もう社会でも通用しません。自分で考え、課題を見つけて解決する力、話し合いや議論のできるコミュニケーション能力というものが必要で、それがいちばん育つのが「遊び」なんです。
それも体を使って、もう本当に夢中になって取り組むような遊び。そこではケンカもするし、できないくやしさ、葛藤もあって、そこで自分たちのやりたいことに向かって取り組む力が育っていく。それは教えられてするような遊びと比べたら、もっと本当に豊かで、すごく大事なことが含まれているんですね。
この大事さってなかなか伝えられないんですけど、このネットを見ただけで、分からなかった人が分かるようになる。頭の固い人でも、子どもたちが遊んでいる姿を見て、「遊びって大事ですね」って言ってくれるんです。本当に、このネット(遊具)の出すメッセージの威力は絶大ですよ。

トラブルを嫌がる親が増えて、思う存分遊べる場所がなくなっている。
自分のやりたい遊びをちゃんとやるということが大切です。

渡辺:今、乳幼児が安全に、大声を出して思う存分遊べる場所がなくなっています。児童館もないような地域では、保育園や幼稚園がその場所を保証しなかったら、子どもは遊ぶこともできません。
それなのに、ケガをするなケンカはさせるなという、トラブルを嫌がる親が増えて、遊具も無くブロックだけとか、そういう保育が増えてきています。幼稚園でも、小学校入学にあわせて座って話が聴けるように、そんなことばかりやらせる。
ゆうゆうのもりの親御さんたちには、自分らしさを発揮しながら人と調整をとっていくことの大事さをわかってもらえるのですが、一般的にはわかってもらえていないですね。 黒田:教育や勉強の話だと、どうしても頭の良い子を育てたい気持ちが出るんですね。でも、たとえば設計デザインの方みたいにクリエイティブな人は、言われたことだけなんてしない。遊び心がありますね。
渡辺:よく遊ぶから、そういうことができるんですね。
遊びは学びなんですが、学習と違って正解を出すんじゃなくて、自分が納得することが大事なんです。たぶん仕事も遊びも、自分のやりたいことをちゃんとやるということが、大切なんだと思いますね。
正野:遊具もないような園に比べると、ゆうゆうの子どもたちは恵まれていますね。
渡辺:それが、中にいる子どもたちにはこれが当たり前なんですよね。ただ、卒業して小学校に行った子どもたちは、「ゆうゆうがいい」って。まあ、授業も含めて小学校はあんまり面白くないらしい(笑)。みんな卒園してからも来てくれていますね。

子どもが自由に遊ぶことの背景に
メンテナンスや日頃からのチェックという責任を考えていなければダメ。

渡辺:遊具で今までに壊れたというところはありませんね。黒田さんに最初に言われたのが、室内のネットは雨とか砂がないから、けっこうもちますよって。
黒田:絶対10年は持ちますよ。特に室内は、最低でも10年は持つとはっきり言いました。
渡辺:ちょっと下の棒がずれて直してもらった、というぐらいですね。
岡部さんが継続的に来てくれて、点検してくれたり、ちょっと直してくれたり、その安心感は大きいですね。
黒田:横浜は仕事も多いので、2~3ヶ月に1回ぐらい訪問するようにしています。
渡辺:遊具の怖さは、もしも子どもがケガをしちゃった時に、遊具に不具合があったからというのが怖いんですよ。
黒田:壊れるのは当たり前なんですが、放置していて使わせたとか、うちも連絡いただいていたのに直しに行かなかったとかで、もしケガが出たら、うちの責任ですし、園に迷惑をかけてしまう。
渡辺:親御さんも、ある程度メンテナンスしていて、ぶつかったというのなら、そんなに文句は出ませんけど、遊具には、やっぱりある程度の緊張感を持っていないといけない。先生たちが開放感をもって自由に遊んでいいよってやってしまうと危ないんです。首にかかっちゃうようなヒモがあるとか、道具をもったまま遊んでるとか、ちょっと危なくて修理が必要な箇所があるとか、そこは先生たちが気づかないといけない。子どもたちが自由に遊ぶっていう、その自由の背景に、メンテナンスや日頃のチェックを含めたある程度の責任は考えておかなければダメですね。