管理的になるのではなく、子どもや状況に合わせて何とかする。
柔軟性が必要という点で、保育と遊具メーカーは共通しています。

黒田:遊具って、作って完成ではないんですよね。それを改良したり、危ないところがあったら撤去したり、そういうふうに直していって、2~3年使ってもらってケガがでなかったら、それが完成型なんだと思います。特に、特注遊具の場合はそうですね。
渡辺:悪いところを直してくれるかどうかは、すごく大きいと思います。
黒田:うちの場合規格品ではないので、ある程度自由に作って、まずいところは直す。これが規格品メーカーになると、確実に安全でクレームの出ないものを作ろうとするんです、事故は困るから。
うちは特注のものが多くて、園長先生や環境デザインさんと作った遊具も、他にはないものだし少し危ないけど作ってみようとなる。まずいところがあったら、直せばいいんです。
渡辺:岡部さんは柔軟性があるんですよ。
外の滑り台もそうなんですが、今ある壁も最初はなかった。だから子どもがそこから屋根に渡っちゃって危なくて、どうしようってことで相談して、環境デザイン研究所さんと岡部さんが、「じゃあこうしたら」とか「ああしよう」とか、侃侃諤諤やって壁がついたわけですよ。
そういう、危ないと気づいた時それをどうするかのノウハウを持っているかいないかは、遊具を自由につくれるかどうかというのに関連しているんでしょうね。
保育もそうですが、決まりきったことしかやらず管理的になるのではなくて、子どもやその状況にあわせて何とかしていくっていうのは、遊具メーカーさんも同じかもしれないですね。
岡部:他のメーカーはカタログで持ってきて納品だから、変更ができないんです。
渡辺:子どもは遊びでいろんな試行錯誤をやっちゃう。それに対して、口で言うんじゃなくて、たとえば滑り台の壁みたいに何らかのかたちで、NOというシグナルを出すんです。それが大人のほうの側の責任ですよね。

今の遊具には子どもの声が届いていないものが多いんです。
子どもが遊んでいるのを見て、教えてもらうのがいちばんいい。

渡辺:姉妹園の港北幼稚園でも岡部さんに遊具をつくってもらったんですが、その時は設計士さんと模型を作って、子どもたちに「こういうのつくりたいんだけど、どう?」って聞いたり、作っているところを子どもたちに見えるようにしたりして、一緒に参加させてくれていたんです。そこが、顔見知りの良さというか、ちょっとした無理も聞いてくれて頼みやすいからできることなんですけど。
たぶん今、遊具はつくる人と使う人がけっこう離れているっていうのが多いんですよ。
黒田:大人が設計して、使うのが子どもですよね。遊具について勉強はしていても、子どもの声が届いていないのが、今の大多数の遊具ですよ。
渡辺:ちょっとでもいい、子どもの意見を聞きながら設計する人も施工の人もみんなでやるっていうことの面白さっていうのは、価格だけではかれない。
黒田:岡部は遊具以外に土木や建築もありますが、空間クリエイティブ部は、使う人がいちばんよく見えますね。たとえば土木は道路を作っても道を走ってる人のことはわからないし、建築も公共施設を建てて中の人が幸せかどうか見えない。
ここで子どもたちが遊んでいるのを見て、よく楽しんでくれてるなと思うと、それで満足しますね。
正野:会社の方針で、私たち設計も、施工した施設ををよく見にいって、子どもたちと触れあったり、話を聞いたりしています。
設計していても、実際図面で描いていたものと、思っていたより大きかった、小さかったということも結構ありますし、こんなふうに使うんだっていうのを子どもたちから教えてもらうことも多いです。
渡辺:子どもが遊んでいるのを見るのがいちばんいいですよね。
黒田:幼稚園、保育園がいちばん、よく見えますね。
公園だと、使う対象もばらばらだし、作る役所の側にも考え方がありますから。本当に子どもたちのことを考えて作っているかとなると、ちょっと違う。どこにもないもので自慢はしたがるけれど、作った後の管理者が違うから、責任回避で安全なものしかできなくなる。自分の立場でしか動いていない、使っている人が見えていないんです。