危険を避けて経験する機会を失うと大変なことになる。
ある程度の危険があるから、遊具で子どもが学び、育つんです。

黒田:遊具で怪我はダメだというけれど、怪我をするから子どもたちにはいいんです。何かして指を切ると、本当に切った時の怖さを覚える。ネットから落ちるのは怖いからつかまるとか、そういう反射神経を働かせるためにも、必ずハザードは必要なんです。危険がなかったら、遊具じゃないですよ。
でも役所だと、特に管理する側は危険のない遊具を作れと言う。絶対事故がおきないようにとか、初めてのものは実績がないからダメとか。
渡辺先生のところは、大きな事故が起きない程度に安全で、子どもたちが学べるある程度の危険があるものっていう話になる。民間のほうが進んでます。
渡辺:だって、子どもが育たないですよ。大人が子どもをケースに入れておいて、元気よく育てましたとは言えない。
黒田:小さいケンカをして、泣いたり、いじめられたりしながら相手の気持ちもわかってくるのに、それをやらずにいるから、平気でいじめたりイラッとさせるようなことをする。
渡辺:ナイフも危ないって隠しておくから、中学生ぐらいになったら人を脅すことにしか使えない。道具は大事に使うと面白いということを経験する機会を失うんですよ。
遊具も同じで、危険があるからこそ、危険に対しての構えができる。
うちに見学にきた教育委員会の方が、「部屋にハサミが出してあるんですね」って言うんです。いま小中ではハサミは先生管理で引き出しにいれている、なぜかというと、ハサミでケンカする子が増えたから危なくて出せない。
ネット遊具をみたら、「こういうところで遊んだら、転んでも手は着けますね」って言う。横浜の北部にある小中学校だけでも毎日のように、転んで手が着けなくて、時には前歯を折るような事故がある。
たとえば、ケガをしないよう壁がソフトでぶつかっても平気なところにいた子は、固い壁に平気でぶつかっていって怪我をする。
黒田:全部が安全な場所なんて、世の中にはありませんから。
渡辺:園長が自分たちの責任を回避したいから、安全だけを守って子どもたちを次に送っちゃえばいいとなるけど、それは育ちではないし、今度は学校に負担がいって、大変なことになっています。

子どもに必要な経験をさせながら、安全にも配慮された遊具を作るには
メーカーと園との連携が不可欠です。

黒田:大人はネット遊具を見ると、落ちたらどうするのかと心配してダメっていう。でも、楽しさの中で落ちないよう自分を守るという教育がある遊具だというのは暗黙の了解ですよ。多少危険なものでなかったら、遊具ではないんです。
うちの会社でも、こういう遊具をやっている限りは怪我をしたら危ないとか、みんな敏感になっています。けれど危険だと言われた時に、これは危険かもしれないけど、怪我はしても骨折はしませんとか、そこまで言い切れればいいんですよね。
渡辺:その辺のところが、遊具にはちゃんと配慮されていますよって、きっちり言えるようにしないといけない。なんでこんな遊具を入れたのかと言われた時に、これは子どもにとって必要な経験ですと言えないと。
黒田:うちがやっているようなオリジナルの施設は、園の先生方の視点がすごく大事なんです。今までにないものだから、こういうところでケガをしたとか、子どもがこうやったとか、園での経験を伝えてもらうことが大切で、遊具を入れてからのその経験値は、ものすごく私たちにとってためになるんです。
園と私たちとが常日頃からコミュニケーションをとって連携する必要を感じます。