すべり台のから始まった遊具のアイディアが
大人も楽しめる大きなアスレチック施設へと発展

──マンションの敷地内に公園施設(アスレチック&テラス)を作ることになった経緯・目的を教えてください。

荒川:販売の始まる2020年がちょうど弊社の創業30周年という節目の年にあたるということもあり、隣接する新築マンションとリノベーションマンションを1つの街として開発するという大々的なプロジェクトに取り組むことになりました。

新築は共用部のスペースを取りやすいですが、リノベーションマンションは新たに建てるのと違い確保が難しく、どうしようかと悩んでいた時に、使われていない斜面と森が目に入って、共用施設として活用できないかと考えました。

森になっている斜面には上と下にリノベーション棟が建っているのですが、当初はそれを繋ぐ短縮ルートとして階段で道が作れたらいいな、くらいに考えていたんです。その際に、大人は階段で充分だけれど、お子さんがすべり台を滑って降りられたら楽しいかな、と思ったのが最初のきっかけでした。
そこから、せっかくならすべり台だけでなく遊具をいくつか設置したらどうかということになり、どんどん発展していって気づけばここまでのアスレチックになっていました(笑)。

──依頼した内容(コンセプト)はどのようなものですか? 遊具の具体的なイメージや希望などはありましたか?

荒川:斜面という地形を活かして、すべり台やネット遊具を作って欲しいとお願いしました。

小野:元々ネットを使用する計画を盛り込んでいましたが、大人も登って寝そべることができるほど広々としたネットを入れたいという要望が追加され、遊具と一緒にネットの使用もどんどん広がっていきました(笑)。

荒川:遊具ってお子さんのためのものというイメージがありますが、ハンモックみたいに使えたら、大人の方にも楽しんでもらえるのではないかと思いました。

小野:ネット遊具に寝そべると、マンション越しに武蔵野台地が見えてとても気持ちがいいんです。この絶景は斜面地ならではだと思いました。

子育て世帯に大好評!アスレチックという付加価値により
近隣と差別化された魅力的なマンションに

──遊具を設置したことで、事業面で何か変化はありましたか?

宮本:マンションの販売価格は、アスレチックを設置することで多少なりとも上がってしまうのが現実。当初、営業担当からは「アスレチックがあるからといってマンションが売れるのか?」という懐疑的な意見もありました。
しかし、完成予想図のパースをHP等に公開した月から、前月と比較して2倍近くにお問い合わせが増えたことで確かな手応えを感じ、社内のアスレチックに対する見方も、お客様の反響を目の当たりにして徐々に変化していきました。
南武線沿いは今、マンションがどんどん建設されています。他の物件は駅の近くだったり商業施設が近くにあったりと利便性が売りになっていますが、このマンションは駅から離れている分、何らかの付加価値が必要でした。
そこでターゲット層にマッチした利便性以外の付加価値として敷地内にアスレチックを設置したことで、お客様に魅力を感じてもらうことが出来、販売に繋がっています。2,000~3,000人が住む規模ならまだしも、206戸という規模でここまでの施設を備えたマンションは他にはないと思います。

荒川:このプロジェクトで「2022キッズデザイン賞」と「日本子育て支援大賞2022」を受賞し、さらに川崎市多摩区では初の「子育てにやさしい住まいと環境認定」を受けました。このアスレチックがあるという環境が、ターゲット層とするプレファミリー、子育てファミリーに響いて、選んでいただけるマンションになったことは間違いありません。
販売価格としてはどうしても高めになってしまうため、事業性についてはこれから検証していく必要がありますが、企業全体として得られたメリットは非常に大きいものがあったと実感しています。