お客様の声

Voice.01 横浜市都筑区

ゆうゆうのもり幼保園様

子どもの「遊び」を見守る大人としていま、考えること。

岡部遊具お客様の声 ゆうゆうのもり幼保園様

2004年に(株)岡部が施工を担当したのが、横浜市都筑区の「ゆうゆうのもり幼保園」。
横浜市で最初の保育所と幼稚園の機能を融合した施設として2004年秋に着工、2005年春に開園しました。
いままでの幼稚園、保育園の枠を超え、子どもが子どもらしく育つことを第一に考えた施設は、日本の子ども施設の第一人者、東京工業大学の仙田満氏と(株)環境デザイン研究所(EDI)による設計で、数々の賞を受賞。総合施設モデル事業として全国的にも非常に注目され、国内外から多くの視察がおとずれています。
「ゆうゆうのもり幼保園」と「株式会社岡部」との開園当初から現在までのお付き合い、遊具と子どもの育ちについて、園長の渡辺英則先生と、施工を担当した(株)岡部・空間クリエイティブ部の黒田部長、東京支店の正野さんに、ゆうゆうのもり幼保園にて、お話をうかがいました。

設計の変更に次ぐ変更で、開園までヒヤヒヤしていました。
岡部さんでなければ、できなかったでしょうね。

渡辺:この園をつくるのは、相当苦労されたと思うんですよ。というか、岡部さんが苦労したんじゃないかと(笑)
設計の仙田先生は施工が進んでいく中で色んなアイディアを出していく方ですし、当時の建築法の関係で外の遊具の回廊の屋根をはずすことになるなど、設計の変更に次ぐ変更で、本当に翌年4月の開園に間に合うか、私もヒヤヒヤしたものです。
その中で、岡部さんはしっかり対応してくださって、おかげさまで4月の開園に無事に子どもたちを迎えることができました。
あとは予算面でも、たとえば、ネットひとつだけだったら金額が高くなるところを、遊具とこれは岡部、基礎は他の建設業者さんという具合に組み立てて、なんとか調整していただいて。
黒田:うちが弱い部分は、強い会社さんに助けてもらったりお願いしたりして、チームワークでやっていくっていう形でしたね。
渡辺:ここの遊具は岡部さんでなかったらできかったでしょうね。

ゆうゆうのもりは、パッと見ただけで園舎や遊具が持つメッセージが伝わるんです。

渡辺:開園当初は、もう本当に大変でした。こちらは建てるのに必死で、ぎりぎりで完成。すぐ保育が始まって、幼稚園の入園式になったら、苦情がいっぱい来たんですよ、「こんな園舎大丈夫か、先生たちは子どもを見ていられるのか」って。
じつは開園の時って、園に入ってくるのは一人目の子もしくは一人っ子なわけで、そういう子たちは遊び方がわからない。ネットに行ったりロフトの階段にいたり、入園式をやるのに親が子どものことを追いかけ切れなくて、式にならないというような状況をみんな見ちゃったんですね。
ところが、だんだん遊ぶことになれてくると、2~3歳の子でも、このネットを使って夢中で遊んでいる。今度はそれを見て、親はどうするか考えるんですよ。先生や大人の目で、こうやっちゃダメですよっていつも言われているのがいいのか、こういう園舎を使いこなして、安全に遊べるような子になっていくのがいいのか、どっちが子どもの育ちなのかと。
私は、園庭とか園舎が出すメッセージはとても大事だと思っていて、それは10年ゆうゆうのもりをやって、ほんとうに大きいと感じています。
たとえば、うちにもよく視察の方がお見えになりますが、園の特徴や保育についていくら丁寧に説明しても、何もない園舎では伝わりづらい。ゆうゆうは、パッと見てわかる。園舎や遊具が持つメッセージが伝わるんです。

子どもが夢中になって取り組む遊びには、本当に豊かで、すごく大事なことが含まれています。

渡辺:小中高を含めた今後の新しい学習指導要領には、自分で問題を解決する力、学んだことを使う力、困難があった時に試行錯誤する力をつけていかないと子どもは育たない、その力を養うのにいちばん大事なのが幼児教育だという話が出ています。
言われたことだけをやっているのでは、もう社会でも通用しません。自分で考え、課題を見つけて解決する力、話し合いや議論のできるコミュニケーション能力というものが必要で、それがいちばん育つのが「遊び」なんです。
それも体を使って、もう本当に夢中になって取り組むような遊び。そこではケンカもするし、できないくやしさ、葛藤もあって、そこで自分たちのやりたいことに向かって取り組む力が育っていく。それは教えられてするような遊びと比べたら、もっと本当に豊かで、すごく大事なことが含まれているんですね。
この大事さってなかなか伝えられないんですけど、このネットを見ただけで、分からなかった人が分かるようになる。頭の固い人でも、子どもたちが遊んでいる姿を見て、「遊びって大事ですね」って言ってくれるんです。本当に、このネット(遊具)の出すメッセージの威力は絶大ですよ。

トラブルを嫌がる親が増えて、思う存分遊べる場所がなくなっている。
自分のやりたい遊びをちゃんとやるということが大切です。

渡辺:今、乳幼児が安全に、大声を出して思う存分遊べる場所がなくなっています。児童館もないような地域では、保育園や幼稚園がその場所を保証しなかったら、子どもは遊ぶこともできません。
それなのに、ケガをするなケンカはさせるなという、トラブルを嫌がる親が増えて、遊具も無くブロックだけとか、そういう保育が増えてきています。幼稚園でも、小学校入学にあわせて座って話が聴けるように、そんなことばかりやらせる。
ゆうゆうのもりの親御さんたちには、自分らしさを発揮しながら人と調整をとっていくことの大事さをわかってもらえるのですが、一般的にはわかってもらえていないですね。 黒田:教育や勉強の話だと、どうしても頭の良い子を育てたい気持ちが出るんですね。でも、たとえば設計デザインの方みたいにクリエイティブな人は、言われたことだけなんてしない。遊び心がありますね。
渡辺:よく遊ぶから、そういうことができるんですね。
遊びは学びなんですが、学習と違って正解を出すんじゃなくて、自分が納得することが大事なんです。たぶん仕事も遊びも、自分のやりたいことをちゃんとやるということが、大切なんだと思いますね。
正野:遊具もないような園に比べると、ゆうゆうの子どもたちは恵まれていますね。
渡辺:それが、中にいる子どもたちにはこれが当たり前なんですよね。ただ、卒業して小学校に行った子どもたちは、「ゆうゆうがいい」って。まあ、授業も含めて小学校はあんまり面白くないらしい(笑)。みんな卒園してからも来てくれていますね。

子どもが自由に遊ぶことの背景に
メンテナンスや日頃からのチェックという責任を考えていなければダメ。

渡辺:遊具で今までに壊れたというところはありませんね。黒田さんに最初に言われたのが、室内のネットは雨とか砂がないから、けっこうもちますよって。
黒田:絶対10年は持ちますよ。特に室内は、最低でも10年は持つとはっきり言いました。
渡辺:ちょっと下の棒がずれて直してもらった、というぐらいですね。
岡部さんが継続的に来てくれて、点検してくれたり、ちょっと直してくれたり、その安心感は大きいですね。
黒田:横浜は仕事も多いので、2~3ヶ月に1回ぐらい訪問するようにしています。
渡辺:遊具の怖さは、もしも子どもがケガをしちゃった時に、遊具に不具合があったからというのが怖いんですよ。
黒田:壊れるのは当たり前なんですが、放置していて使わせたとか、うちも連絡いただいていたのに直しに行かなかったとかで、もしケガが出たら、うちの責任ですし、園に迷惑をかけてしまう。
渡辺:親御さんも、ある程度メンテナンスしていて、ぶつかったというのなら、そんなに文句は出ませんけど、遊具には、やっぱりある程度の緊張感を持っていないといけない。先生たちが開放感をもって自由に遊んでいいよってやってしまうと危ないんです。首にかかっちゃうようなヒモがあるとか、道具をもったまま遊んでるとか、ちょっと危なくて修理が必要な箇所があるとか、そこは先生たちが気づかないといけない。子どもたちが自由に遊ぶっていう、その自由の背景に、メンテナンスや日頃のチェックを含めたある程度の責任は考えておかなければダメですね。

管理的になるのではなく、子どもや状況に合わせて何とかする。
柔軟性が必要という点で、保育と遊具メーカーは共通しています。

黒田:遊具って、作って完成ではないんですよね。それを改良したり、危ないところがあったら撤去したり、そういうふうに直していって、2~3年使ってもらってケガがでなかったら、それが完成型なんだと思います。特に、特注遊具の場合はそうですね。
渡辺:悪いところを直してくれるかどうかは、すごく大きいと思います。
黒田:うちの場合規格品ではないので、ある程度自由に作って、まずいところは直す。これが規格品メーカーになると、確実に安全でクレームの出ないものを作ろうとするんです、事故は困るから。
うちは特注のものが多くて、園長先生や環境デザインさんと作った遊具も、他にはないものだし少し危ないけど作ってみようとなる。まずいところがあったら、直せばいいんです。
渡辺:岡部さんは柔軟性があるんですよ。
外の滑り台もそうなんですが、今ある壁も最初はなかった。だから子どもがそこから屋根に渡っちゃって危なくて、どうしようってことで相談して、環境デザイン研究所さんと岡部さんが、「じゃあこうしたら」とか「ああしよう」とか、侃侃諤諤やって壁がついたわけですよ。
そういう、危ないと気づいた時それをどうするかのノウハウを持っているかいないかは、遊具を自由につくれるかどうかというのに関連しているんでしょうね。
保育もそうですが、決まりきったことしかやらず管理的になるのではなくて、子どもやその状況にあわせて何とかしていくっていうのは、遊具メーカーさんも同じかもしれないですね。
岡部:他のメーカーはカタログで持ってきて納品だから、変更ができないんです。
渡辺:子どもは遊びでいろんな試行錯誤をやっちゃう。それに対して、口で言うんじゃなくて、たとえば滑り台の壁みたいに何らかのかたちで、NOというシグナルを出すんです。それが大人のほうの側の責任ですよね。

今の遊具には子どもの声が届いていないものが多いんです。
子どもが遊んでいるのを見て、教えてもらうのがいちばんいい。

渡辺:姉妹園の港北幼稚園でも岡部さんに遊具をつくってもらったんですが、その時は設計士さんと模型を作って、子どもたちに「こういうのつくりたいんだけど、どう?」って聞いたり、作っているところを子どもたちに見えるようにしたりして、一緒に参加させてくれていたんです。そこが、顔見知りの良さというか、ちょっとした無理も聞いてくれて頼みやすいからできることなんですけど。
たぶん今、遊具はつくる人と使う人がけっこう離れているっていうのが多いんですよ。
黒田:大人が設計して、使うのが子どもですよね。遊具について勉強はしていても、子どもの声が届いていないのが、今の大多数の遊具ですよ。
渡辺:ちょっとでもいい、子どもの意見を聞きながら設計する人も施工の人もみんなでやるっていうことの面白さっていうのは、価格だけではかれない。
黒田:岡部は遊具以外に土木や建築もありますが、空間クリエイティブ部は、使う人がいちばんよく見えますね。たとえば土木は道路を作っても道を走ってる人のことはわからないし、建築も公共施設を建てて中の人が幸せかどうか見えない。
ここで子どもたちが遊んでいるのを見て、よく楽しんでくれてるなと思うと、それで満足しますね。
正野:会社の方針で、私たち設計も、施工した施設ををよく見にいって、子どもたちと触れあったり、話を聞いたりしています。
設計していても、実際図面で描いていたものと、思っていたより大きかった、小さかったということも結構ありますし、こんなふうに使うんだっていうのを子どもたちから教えてもらうことも多いです。
渡辺:子どもが遊んでいるのを見るのがいちばんいいですよね。
黒田:幼稚園、保育園がいちばん、よく見えますね。
公園だと、使う対象もばらばらだし、作る役所の側にも考え方がありますから。本当に子どもたちのことを考えて作っているかとなると、ちょっと違う。どこにもないもので自慢はしたがるけれど、作った後の管理者が違うから、責任回避で安全なものしかできなくなる。自分の立場でしか動いていない、使っている人が見えていないんです。

危険を避けて経験する機会を失うと大変なことになる。
ある程度の危険があるから、遊具で子どもが学び、育つんです。

黒田:遊具で怪我はダメだというけれど、怪我をするから子どもたちにはいいんです。何かして指を切ると、本当に切った時の怖さを覚える。ネットから落ちるのは怖いからつかまるとか、そういう反射神経を働かせるためにも、必ずハザードは必要なんです。危険がなかったら、遊具じゃないですよ。
でも役所だと、特に管理する側は危険のない遊具を作れと言う。絶対事故がおきないようにとか、初めてのものは実績がないからダメとか。
渡辺先生のところは、大きな事故が起きない程度に安全で、子どもたちが学べるある程度の危険があるものっていう話になる。民間のほうが進んでます。
渡辺:だって、子どもが育たないですよ。大人が子どもをケースに入れておいて、元気よく育てましたとは言えない。
黒田:小さいケンカをして、泣いたり、いじめられたりしながら相手の気持ちもわかってくるのに、それをやらずにいるから、平気でいじめたりイラッとさせるようなことをする。
渡辺:ナイフも危ないって隠しておくから、中学生ぐらいになったら人を脅すことにしか使えない。道具は大事に使うと面白いということを経験する機会を失うんですよ。
遊具も同じで、危険があるからこそ、危険に対しての構えができる。
うちに見学にきた教育委員会の方が、「部屋にハサミが出してあるんですね」って言うんです。いま小中ではハサミは先生管理で引き出しにいれている、なぜかというと、ハサミでケンカする子が増えたから危なくて出せない。
ネット遊具をみたら、「こういうところで遊んだら、転んでも手は着けますね」って言う。横浜の北部にある小中学校だけでも毎日のように、転んで手が着けなくて、時には前歯を折るような事故がある。
たとえば、ケガをしないよう壁がソフトでぶつかっても平気なところにいた子は、固い壁に平気でぶつかっていって怪我をする。
黒田:全部が安全な場所なんて、世の中にはありませんから。
渡辺:園長が自分たちの責任を回避したいから、安全だけを守って子どもたちを次に送っちゃえばいいとなるけど、それは育ちではないし、今度は学校に負担がいって、大変なことになっています。

子どもに必要な経験をさせながら、安全にも配慮された遊具を作るには
メーカーと園との連携が不可欠です。

黒田:大人はネット遊具を見ると、落ちたらどうするのかと心配してダメっていう。でも、楽しさの中で落ちないよう自分を守るという教育がある遊具だというのは暗黙の了解ですよ。多少危険なものでなかったら、遊具ではないんです。
うちの会社でも、こういう遊具をやっている限りは怪我をしたら危ないとか、みんな敏感になっています。けれど危険だと言われた時に、これは危険かもしれないけど、怪我はしても骨折はしませんとか、そこまで言い切れればいいんですよね。
渡辺:その辺のところが、遊具にはちゃんと配慮されていますよって、きっちり言えるようにしないといけない。なんでこんな遊具を入れたのかと言われた時に、これは子どもにとって必要な経験ですと言えないと。
黒田:うちがやっているようなオリジナルの施設は、園の先生方の視点がすごく大事なんです。今までにないものだから、こういうところでケガをしたとか、子どもがこうやったとか、園での経験を伝えてもらうことが大切で、遊具を入れてからのその経験値は、ものすごく私たちにとってためになるんです。
園と私たちとが常日頃からコミュニケーションをとって連携する必要を感じます。

子どもたちの遊びの大切さを強く訴えていかないと、日本に未来はない。
乳幼児期の「遊び」を支える企業がもっと必要です。

渡辺:今年から子育て支援が社会保障の中に入って、子育をて支援して少子化を何とかしないと日本人に未来はないって話になっています。一人ひとりの子どもが、ちゃんと育ってたくましく生きていかないと、絶対、これからの社会を支えきれなくなります。
それを改めて考えた時に、乳幼児期の「遊び」を大事にするような企業がもっと必要なのだと思います。
もちろん、予算にも限りがあるけれど、その与えられた中で、子どものことを考えてくれたりとか、その園にあわせて作ってくれたりとか、それができることが大事なんですよ。
おもちゃを与えとけばいいっていうのではなくて、もっと子どもの生活そのものを大事にする遊具を考えませんか、それを考えてくれる企業がちゃんとありますよ、って言うことも、岡部さんたちがいないと、できなくなっちゃう。
たとえば園の飼育動物でも、獣医さんが入ってくれほうがいいし、プロが入ってきちんと見てくれてフォローしてくれる、支えてくれていないと、園長も、自由に遊びなさいっていえない環境があるんです。
どれだけ遊びが子どもたちにとって大事かということを、色んな人たちが言わないと、子どもの遊びを保証するってことはますますピンチになる。
これからの岡部さんの役割は大きいですし、是非がんばっていただきたいなと思っています。