お客様の声

Voice.09 兵庫県小野市

amber(アンバル)様

建築会社の新たなチャレンジとして取り組む「子ども事業」。

公共性の高い事業にあえて着手した「想い」と本業へのシナジー効果とは。

岡部遊具お客様の声 アンバル様

まるで教会のような外観デザインが素敵な「アンバル」様は、兵庫県小野市に2022年11月オープンした室内遊戯ハウス。0~6歳児までの未就学のお子様と保護者など大人の方のリラックスをコンセプトにした施設です。岡部は室内のネット遊具の設計から制作・施工までを担当しました。アンバル様にて、代表の板井社長ご夫妻、マネージャーの足立さんと、(株)岡部東京支店の小野、正野が、今回の遊具制作について一緒にお話しをさせていただきました。

思った以上に迫力ある出来栄え
わくわくする異次元のアスレチック空間

──出来上がった遊具を初めてご覧になった時の印象はいかがでしたか?

社長:他にない、わくわくするアスレチック。異次元の空間が思った通りにできあがったなと思いました。

足立:今までにない感覚、ですね。出来上がるまでネット遊具についてイメージが全然できなくて、出来上がって実際に遊具に上がって歩くのは、まさに初めての体験でした。

奥様:「できたー!」という嬉しさと、思っていた以上にいいものになったということを感じました。図面だけで見ていたので、実際に目で見ると迫力がありましたね。

──ご利用者様からの反応はいかがですか?

社長:お子さんは最初は少し怖がっている感じで、お父さんお母さんと一緒に上がってきて楽しまれていますね。大人の方も本当に楽しめるので、お父さんお母さんが無邪気な笑顔で遊んでいる姿が印象的です。

足立:ご利用のお子様の対象年齢は6歳の未就学児までになっています。3〜4歳から上のお子さんはボールプールに潜って遊んだり、跳ねたり、スルスルっと上がっていって、自由自在に遊んでいますね。1Fでは、木製のおもちゃなどで小さなお子様も遊べます。
利用は時間単位になっていて、1〜2時間の方が多いですが、フリーパスで1日通して遊んでいかれる方もいらっしゃいます。

奥様:建物は大きくないので、その規模から想像できない遊具の迫力で、みなさん2階にあがったときに「うわーっ!」「なにこれ、見たことない!」となっていますね。たくさん写真を撮ってインスタグラムなどでアップしてくださっています。
おでかけ系のインスタグラムをされているインフルエンサーの方もオープンしてすぐ来てくださって、アップした動画なども一番再生回数が多いそうです。

子どもの感性を育てる施設を作りたい
お客様との会話から生まれた「想い」

──こちらの施設を作ることになった経緯・目的をおきかせください。

社長:きっかけは、本業の注文住宅のお客様との会話でした。
弊社で注文住宅を建てる方は、子育て世代もしくはこれから子どもを産んで育てたい世代の方が、ほぼ100%に近い割合。話をしていると、日常の不満だったり夫婦のお互いの愚痴だったり、いろいろなことがでてくるのですが、その中でも特に多いのが子育ては大変という話です。実際うちの娘も3歳で、子育ての大変さをまさに実感していて。子育てに関するいろんな話をお客様としていく中で、子どもの感性とはなんだろうと考えるようになったんですね。

昔から「三つ子の魂百まで」と言われますが、3歳頃までに子どもが得る知識は、大人になっても覚えていることが徐々にわかってきているそうです。たとえば、うちのお客様に大学の言語学の先生がいらっしゃるのですが、その方によると、3歳までにいろんな言語を聞かせると、大人になっても忘れずにいてスムーズにその言語を聞き入れることができるそうなんです。

遊ぶだけじゃなく、色を見たり、触ったり、香りを嗅いだり。感性を育てることは贅沢ではなく、子どもには必要なことなんだなと。そこから徐々にこういう施設を作っていこうか、という考えになりました。

奥様:対象年齢を6歳の未就学児までにしたのは、小さなお子さんの遊び場を作りたかったということもあります。
我が家も子どもがまだ小さいので特に思うんですが、小学校以上のお子さんと一緒に遊ぶ施設だと、大きい子が思いっきり遊んでいるところに入るのは、ちょっと怖いなというのがあって。未就学の小さい子が安心して遊べる場所として喜んでいただける施設が作りたいという思いがありました。

社長:新規事業として始めるのに、かなり思い切った投資をしました。子ども用のものは、とにかく高額です。おもちゃも遊具も、非常に高い。

子ども関連の事業は公共性が高いので、利益がまずとれません。
やっぱり国や自治体から補助してもらう以外に、この事業は成功しないのではないかという不安は、今でもあります。
今のところ公共との結びつきはありません。いずれは一緒にやっていけたらと思いますが、やはり独自に取り組みたいとの思いもあるので、毎日何ができるか考えていますね。

子ども事業では施設の建物自体の価値も重視しました。
ただ単に子どものおもちゃを倉庫のようなところに入れるのではなくて、インテリア性とデザイン性を持った建物を本業の我々が作ることによって、相乗効果が得られると思っています。
昔から、海外にある教会のような三角屋根の建物で子どもたちを遊ばせてあげたいというイメージがあって、前面がガラス張りの目を引くデザインにしました。私のところで建てたものでは、今までになかった形です。木を使ったあたたかみも、デザインの特徴です。

──遊具についての具体的な要望などはありましたか。

小野:今回の遊具は、岡部が作って納めたというよりは、板井建設さんと岡部のコラボレーションという位置付けになりました。
遊具の設計は岡部ですが、建築の会社さんなので、柱などの木材、建物部分は板井さんにお願いしています。岡部はほぼ、この遊具のネット工事だけという形です。 ネットについてはこうして欲しいなどのご要望をいただき、遊具の構造計算も含めて設計の正野が板井建設さんとやりとりをさせてもらいました。

奥様:建物自体大きなものではないので、使い方を色々と考えていました。2階は天井の高さがあるし、遊具がワンフロアだけでは小さいのでロフトをつけたいと思っていたのですが、設計上難しくて。それでネット遊具なら段がなくても多層構造なので遊んでもらえる面積も広がるし、複雑なところも楽しいなと思いました。前面はガラス張りなので、光を通して明るくなりますし。
私は要望を伝えるばかりなので、それを実現してくださるのは大変だったと思います。

小野:正直なかなか大変でした(笑)

奥様:もうちょっと広くならないですかとか、棚作れないですかとか、かなり細かいところまで口出ししていたので、大変だったと思います。素人なので紙の上だけだと広さの感覚などイメージがわかなくて。言うだけ言って、あとはお任せで。
だから、出来上がりが想像以上に満足できる仕上がりになっていて、こんなすごいのができたんだねっていう気持ちになりました。

他にないものだから意味がある
統一感と「らしさ」のある空間づくり

──遊具を作ったことで、本来の事業に変化はありましたか。

社長:本業の住宅建築の方でも、子どもに関する収納の提案などしています。アンバルの1階にあるような可愛らしい本棚をつけたいんです、という方もいらっしゃいますね。
あとは、子どもの事業をすることで、信頼感というものは得られているんじゃないかなと思います。

新規事業を考えるにあたっては、社内でいろんな話がでました。コインランドリーとか、唐揚げ屋さんとか。選択肢として他もあったんじゃないかと今も言われます。
でも、たとえば車で同じ一千万円出すとして、ベンツと珍しい車のどちらを選ぶか考えてみてください。普通はベンツを選ぶでしょう。ところが、ベンツが走っていても誰も振り向かないけれど、珍しい車なら振り向く人の率は高い。
アンバルのような施設はこのエリアにはなかったものですが、どこにでもあるものでなく、他にないものだから意味があると思っています。

子どもの事業って、一人が大きくなったら次の子が来て、また次へと、ずっと続いていきますよね。育っていった子を持つ人が小さい子のいるご家族にアンバルという遊び場をすすめてくださって、次の新しいご家族が増えていって、目まぐるしく変わりながら続いていく。
今後アンバルを知る人がどんどん増えて、建築のほうにも、家を建てたいという人が流れてきてくれたらと思います。

──岡部について、依頼した理由や決め手は何でしたか。

社長:遊具メーカーをネット検索で探して何社かピックアップしたんですが、問い合わせへの回答が、岡部さんからのものが一番内容が詰まっていました。あと、回答してくださったのが小野さんで、ここ小野市と同じ名前の方なんだと思って。

小野:小野市は「そろばんの町」というのは知っていたんですが、自分と同じ名前の小野市というところで仕事がしてみたくて。初めて訪ねていって、仕事をやらせてくださいと(笑)

社長:問い合わせをしてすぐ来ていただいて。

奥様:東京からわざわざお越しいただけるなんて、びっくりしました。
話をさせていただいて、すごくこちらの発想を汲んでくださるというか、楽しいもの、良いものを作りたいという熱量が一緒というか、温度差がなく一緒に作ってくださるような感じがありました。

小野:最終的には建築のフレームは板井さん任せで、遊具ネットだけ岡部でやらせていただきましたが、最初はすべて含んでいて、相当の金額になるとお伝えしたと思います。

社長:もう、それを聞いて「無理やな」と思いました(笑)

奥様:ほんとに、子ども遊具をあなどっていたというか。計画時に金額を全然調べていなかったので。岡部さんじゃなくて他のメーカーですが、ボールプールのボールだけで何百万もするんですよね。

小野:遊具が高額になるのは、思った以上に人件費がかかっているからなんです。製造するのに工場のラインで大量に作れるわけではないので、滑り台も人が手で溶接するし、何でも人の手がかかる。だから、絶対に「高い」と思われる金額になってしまいます。

奥様:安全性と信用を考えたら、そうなってしまうんですね。

小野:一時期遊具も安い外国製品が入ってきていましたが、精度にかなりの誤差があって、今はほとんどなくなりましたね。壊れやすくて事故になっているものもあります。

──制作過程で印象に残っていること、エピソードなどありますか?

正野:最初に奥様からいただいたイメージのパースが、大きな滑り台が天井から出ていて、すごく楽しそうだったのが印象的でした。基準的には難しくてできそうにないかなと思いましたが、できるならやってみたいなあと。とても面白そうで、素晴らしかったです。
それと、打ち合わせをさせていただいた時、こうしたい、ああしたいというお話を聞いていて、奥様の熱量をすごく感じました。

奥様:ここができるまでは、まったく遊具について知らなかったんですよ。
もともと、子どもには、いろんな良いものを吸収して欲しいなというのがあって。そこから情報を見ていくようになって、どんどん、こういうものがあったらいいんじゃないかと考えるようになりました。
たぶん一番最初にお願いしたときの構想は、建物全体を遊び場にしたいというものでしたよね。

社長:やりたいことと、予算とのバランスが難しかったですね。

奥様:言いたい放題で、インパクトがないとか、ほかにあるものはつまらないとか、すぐ言ってしまうので(笑)できるできない、いろいろ皆で言い合いながら考えて。最初言っていたのとはがらっと変更してもらう形にはなりましたけど、満足いくものが出来ました。

奥様:あとは、ネット遊具のことではないのですが、おもちゃや使うものを選ぶのに、「うちのカラーにあうかどうか」をしっかり考え統一感を大事にしています。
どんなに良いおもちゃがあっても、それだけポツンと違うものになったり、変に妥協してしまうと、せっかくデザインの良い建物を作ってもだんだん崩れていってしまうかなと。
スタッフの制服ひとつとっても、すごく悩みました。

足立:遊具施設は制服がポロシャツとチノパンというところが多いと思うんですけど、制服に関してはもう悩んで悩んで。相談してもみんないろんなことを言うので。

奥様:選んだのはホテルのカフェスタッフのようなシックなデザインで、生地にコーヒーの廃材を使った、SDGsを意識したものです。アンバルも、小野市のSDGs認証をとっているということもありますし。

社長:でも「それカフェやん」みたいな、反応ばっかりでしたね。

足立:一般的にはそういう意見が出ると思うんですけど、コンセプトを考慮すると、こういうところにいきつく。やっぱり、建物もそうですけど、他にはないということが一つのコンセプトなんだと思います。

「アンバル」をきっかけに広がっていく
子ども事業の可能性

──今後の展望、新しく考えていることはありますか。

社長:子どもに関することは、いろいろと広がっていく可能性が大きいですよね。
始めたばかりですが、アンバルのオンラインショップもやっていて、こだわりの商品の掲載を進めてている最中です。
ECサイトも、1年ぐらいかけて定着させていって、アンバルの利益を安定させるために少しでも補えるものにしたいと思っていて。事業の継続性を考えていくと、本当に大変ですね。
でも、目先の数字ばかり追うと夢がなくなるので、もっとコミュニケーションが必要ですね。

足立:本当はスタッフも楽しまなきゃいけないんでしょうけど、日々の業務に追われていて。楽しまないといろんな発想が出てこないですよね。

奥様:衛生面の徹底など業務で余裕がない状況ですが、スタッフにも子どもと一緒に遊んでもらうのが大事だなと思っていて。お客様とのコミュニケーションがもっととれたら、さらに居心地のいい空間になっていけると思っています。

あと、遠慮されている大人の方も、どんどんネット遊具に上って遊んでいただきたい。ネットに上ると、むしろ大人の方の方がテンションがあがるし、ボールプールに埋もれて寝転んで癒されているお父さんも見かけます。 だから、遠慮されている大人の方にはもっと遊具に上っていただいて、親も子も楽しめる空間だねって思ってもらえたらいいですね。

奥様:いまご利用の方は、お子さんについてすごく考えていらっしゃる方が多い印象です。衛生面や安全性、体の発育に良いネット遊具もあるし、1階の木製のおもちゃも家で揃えようと思ったらすごい金額になるので、それを試せると思ったら料金は別に高いと思わないと言ってくださる方もいらっしゃいました。
とはいえ、なかなか無料の大きな公園などには勝てないですよね。

社長:無料だし、食事ができる場所もあるので。

奥様:うちはもともと館内飲食禁止で、決まった場所で飲み物だけOKだったんですが、お昼ごはんを食べさせたいという方が多くいらっしゃいました。
そこで、お庭のほうでお食事していただけるよう開放したり、キッチンカーを呼ぶイベントなども行ったりしていて、今後も続けたいと思っています。

社長:アンバルに価値を感じてくださっている方に利用して良かったと思っていただき、どんどん来ていただくには、もっとSNSなどを使って幅広く知ってもらわなければいけないというのはありますね。
あと、ここを建築会社がやっているということが全然リンクできていないので、そこはもっと伝えていかなければいけないですね。

──今後の岡部に対して期待すること、希望などあればお聞かせください。

社長:私たちが欲しいものを、リーズナブルに(笑)開発していただきたいです。それを、買取ではなく、リースにして欲しい。その時代その時に流行りのものを、こういうお金に困っているところにリースをしてもらえたらいいのになと思います。

小野:じつはリースについてのお問い合わせは多いんですよ。岡部でも検討はしているのですが、なかなかハードルが高いんです。
価格を安くするのは難しいですが、今、ある程度規格化して増やしていけるというコンセプトの遊具を開発しています。少しでも遊具が導入しやすくなるよう考えてはいますが、やはり一般的な感覚からすると驚く価格にはなってしまうんですよね。

社長:いつも思うんですけど、本当はこういう施設にもうちょっと補助していただけるような、国なり自治体の事業があるといちばんいいんですけどね。私たちのような思いを持ったところ、公共性のあるような施設には、ぜひ補助を検討していただけないかと思っています。

小野:板井さんは注文住宅をやっていらっしゃいますが、家にネット遊具をつけたいという個人の方からのお問い合わせも、じつはけっこうあるんですよ。でも、皆さん金額を聞くと、やはり「えっ」となりますね。

社長:子どものものは金額が高いですが、お金がかかってもこだわったものにしたいという層はいると思うんです。
今後、アンバルをアイコンとして弊社の子ども事業を知っていただいたお客様に向けた、子どもの育ちのための注文住宅を考えていきたい。デザインもそうですが、ネット遊具とのセットなど、岡部さんともコラボできるようなものをやっていけたらいいですね。
ぜひこれからも、よろしくお願いします。