利用者が半年で10倍に!遠方からも人の集まる
魅力的な遊び場を、小さな町が実現できた理由とは。
2025年5月に奈良県川西町に誕生した「川西町こども・子育て広場『もくいく』」は、町制50周年を機にリニューアルした子育て支援センターです。木の温もりを活かした独創的な遊具の導入により、年間利用者が昨年度の10倍に迫る勢いで急増し、町外からも多くの人々が訪れる拠点となっています。今回は、町長の小澤晃広様、川西町福祉こども課の岩田 映様をはじめ本プロジェクトに携わった担当者の皆様に、(株)岡部 営業担当の渡邉と設計担当 林が、お話をうかがいました。(本文の敬称略)
想像を超える反響!
日本全国から人が訪れる遊び場へ
――完成した遊具を初めてご覧になった時の感想をお聞かせください。
岩田様: 図面やパースで打ち合わせを重ねてきましたが、実物の木製遊具「キュービックウッド」を目の当たりにした時は、その圧倒的な存在感に驚きました。入り口から見える景観だけでなく、奥へ進むほど「音が鳴るクッション」や「ボルダリング」といった新しい発見があり、大人の私でもワクワクする仕上がりでした。
運営担当者様: 以前の何もないスペースを知っていたので、一目見て「すごい!」と感動しました。木の柔らかな質感や香りが素晴らしく、床の木材とも見事に調和しています。毎日ここで過ごせることが幸せだと感じるほど、温もりある空間になりました。
小澤町長: 私も想像していた以上の素晴らしい雰囲気に驚きました。まさに町が目指した「居心地の良い空間」が期待以上の形で実現出来たと感じています。
――オープン後、ご利用者様からはどのような反応がありましたか?
運営担当者様: オープン当初は土曜日など1時間に60人が詰めかけるほどの大盛況でした。一歩足を踏み入れると、皆様パッと笑顔になられます。0歳から小学6年生までが対象ですが、エリアが分かれているため安心して遊べると好評で、おじいちゃんやおばあちゃんがベンチで見守り、お孫さんと共に多世代で楽しまれている姿が印象的です。
――利用者数の増加など、具体的な反響についてはいかがでしょうか。
小澤町長: 移転前の昨年度は年間利用者数が延べ2,500人程度でしたが、リニューアル後は半年で1万1,000人を超え、約10倍に急増しました。Instagramを見たという方が、北は青森、南は熊本から訪れてくださるなど、町の認知度向上にも大きく貢献しています。
木のぬくもりを感じるデザインで統一された
世代を超えた交流の拠点
――今回、オリジナルの大型遊具を導入することになった背景を教えてください。
小澤町長: 川西町は「子育て・教育の支援強化」を重点政策に掲げています。以前の施設は未就学児が対象でしたが、保護者の方から「小学生も室内で遊べる場所が欲しい」「世代を超えて交流したい」という声をいただき、町制50周年の節目に、年齢制限を広げた新しい拠点を作ることにしました。
――デザインや機能面では、どのような工夫をしたのでしょうか。
岡部・林: 広場全体に統一感を持たせるため、奈良県や関西に多く見られる屋根形式の一典型である「大和棟」のモチーフを、遊具やベンチ、棚、ゲートなどの装飾に取り入れました。また、ガラス張りの外観を活かし、外からも中の楽しさ・賑わいが伝わるよう、遊具の配置を窓側に寄せる工夫をしています。
運営担当者様:この統一感のあるデザインが、利用者からの「木のぬくもりを感じる」という言葉に繋がっていると思います。また、このモチーフを利用したフォトブースも好評で、 SNSを通じた集客や、季節感を演出する要素としても役立っています。
施設が文化会館の2階にあるため、ガラス越しに遊び場が見えることで、文化会館を訪れた方々は、こどもたちのいる楽しい雰囲気や賑わいを感じられます。
リアルな親目線を盛り込んだ
遊びを止めない「回遊性」へのこだわり
岡部・渡邉: 遊び場としては、「回遊性」を特に重視しています。こどもが飽きずにぐるぐる回れる動線を設計し、複数の登り口や滑り台を組み合わせることで、遊びが途切れない構成にしています。弊社が空間づくりに取り入れる多重知能理論に基づき、身体的・音楽的・論理的など8つの知能をバランス良く育み、こどもの成長に寄り添った要素を網羅しました。
運営担当者様:遊び場では、日々お子さんたちの目覚ましい成長に驚かされています。特に0歳児など小さなお子さんは、たった数ヶ月の間でも遊び方が劇的に変わっていきます。最初は乳児エリアで遊んでいた子が、次に来た時には「あ、次はあっちの遊具に挑戦できるようになったんだな」と、できることがどんどん増えていく。その姿は、見守っている親御さんにとっても大きな喜びであり、ここへ通う楽しみの一つになっています。
岩田様: 私たち担当者も近隣施設を視察し、「保護者が安心して見守れるか」「こどもが夢中になれるか」というところは、特に時間をかけて話し合いました。さらに町長や私も含め、子育て中の世代が多く関わっていることもあり、よりリアルな「親としての視点」も要望に反映されています。その想いを、岡部さんがうまく汲み取ってくださったと感じています。
施設を大切にする心が生まれる
「この人が作りました」ステッカー
――製作過程で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
岩田様: 行政として納期厳守は絶対でしたが、タイトなスケジュールの中でも、誠実に対応してくださる姿に安心感を覚えました。工事の担当が初めてだった私に、検査の着眼点をひとつひとつ丁寧にアドバイスいただけたことも助かりました。
運営担当者様: 岡部さんが作成してくださった、「この人が作りました」という製作者の紹介パネルが、本当に素晴らしい効果を発揮しています。よく地元のスーパーなどで「私が作りました」と農家さんの写真が貼ってある野菜がありますが、まさにあのような安心感と温かみがあります。
岡部・渡邉 :これは川西町様からの依頼で作成しました。最初は「1名でA4サイズ1枚程度」というご依頼だったのですが、その大きさで自分の顔が掲示されることがちょっと恥ずかしいと感じて、担当者3名が並んだものになりました(笑)
――実際に、現場ではどのような変化があったのでしょうか。
運営担当者様: 例えば、元気すぎて少し乱暴に遊具を扱ったり、登ってはいけない屋根に登ろうとしたりするお子さんがいます。そんな時、スタッフがその子を呼んで紹介パネルを見せながら、「この人たちが一生懸命、心を込めて作ってくれたんだよ」と語りかけるんです。すると、こどもたちは「そうなんだ」と納得した表情を見せ、自然と遊具を大切に扱おうとしてくれます。
岩田様:紹介パネルにはこどもでも読めるようにふりがなを振ってくださるなど、細やかな配慮も感じられました。単なる禁止事項の看板を立てるよりも、作り手の存在を感じられるこの紹介パネルこそが何より効果のある「表示」になっています。大人の方からも「どこが作った遊具ですか?」と聞かれることが多く、地域全体でこの場所を大切にしようという空気が生まれています。
成長や遊びの面白さを妨げずに
安全性を高めるプロ視点のアドバイス
――公共の施設として、遊び場の「安全性」についてはどのように考えられたのでしょうか?
岩田様: 公の施設に遊具を設置するにあたって、「安全」は間違いなく最優先すべき事項でした。検討段階では、視察や打ち合わせを重ねる中で「もっとこうしたい」という要望も多く出ましたが、岡部さんからは「それは安全規準の観点から難しい」「こどもの遊び方によっては危険が生じる」といった指摘をプロの視点からハッキリと言っていただきました。その助言を反映した結果、オープンから半年以上が経過した現在も、無事故での運営を継続できています。
岡部・渡邉:ただ、安全を重視しすぎて「リスク(こどもの成長に必要な挑戦)」をなくそうとすると、遊具を置かない方がよいことになります。危険を強調しすぎて「遊び」の楽しさを奪ってしまうのではなく、新しい遊びを自分で見つけ学ぶことは、自信と満足につながりますし、ある程度の危険をはらんでいる遊びにチャレンジする中で自分の能力と危機管理を学ぶことが必要です。
一方で「ハザード(こどもが予測管理できない、遊びの価値と無関係な事故につながる、受容できない危険性)」は、作り手として想定されるあらゆる受容できない危険性を排除して安全性の確保に努めています。
――現場の運営スタッフから見て、安全面での工夫を感じる部分はありますか?
運営担当者様: 設計の細部まで配慮が行き届いていると感じます。例えば、キュービックウッドのアイテムの高さ一つとっても、「あとちょっとで手が届きそう」という絶妙な高さに設定されており、安全を守りながらもこどもたちの挑戦心をくすぐる仕掛けになっています。 また、メンテナンスも非常に迅速で、常に安心してこどもたちを迎え入れることができています。
「楽しめるもの」を追求する姿勢は
公共の場でこそ必要
――現在の川西町の政策や、今後の子育て支援についてお聞かせください。
小澤町長: 私の政策には「シニアの生活支援強化」「子育て・教育の支援強化」「人・企業が集まるまちづくり」「行財政改革の推進強化」の4つの柱があります。子育てに関しては、第2子以降の保育料無償化や中学校給食費・小学校制服の完全無償化など、全国に先駆けた取り組みを続けてきました。
今後はこの「もくいく」を、保護者の方が気軽に悩みを相談できるようなサポート拠点へと進化させたいと考えています。また、現在は小学生までが対象ですが、中学生などのユース世代にとっても居心地の良い「居場所」を作っていきたいと考えています。
――今後、岡部に期待することはありますか?
運営担当者様: 現在のメンテナンス体制には非常に満足しています。今後は、隣接する中庭「能の庭」でも大人がくつろげたり、こどもが噴水以外でも遊べるような仕掛けを一緒に考えていただけると嬉しいですね。イベント時には移動できるような、汎用性の高いデザインの提案を期待しています。
――遊具導入を検討されている自治体等へのアドバイスがあればお願いします。
小澤町長:「どこにでもあるもの」を作るのではなく、「家庭では体験できない、公共の場だからこそ楽しめるもの」を追求することで、利用者の満足度が非常に高い施設になりました。予算規模は小さくありませんでしたが、町議会や住民の皆様にも「これだけの価値があるものができてました!」と自信を持って説明できています。
安全をしっかり確保しつつ、楽しさとのバランスを一緒に追求してくれる、オリジナリティーの高い遊具を製作できるパートナーを選ぶことが、成功への近道だと思います。
岡部・渡邉 / 林:お忙しい中、長時間にわたりお時間をいただき、ありがとうございました。