「子どもは楽しく、大人は楽に」を実現するリゾートホテル。キッズスペースから始まる、目的型施設へのシフトとは。
2024年4月1日にリブランドオープンした、グランドメルキュール八ヶ岳リゾート&スパ様。リブランドに伴い、グループ内で唯一、大規模な屋内キッズエリアを導入されました。(株)岡部ではキッズスペース・杜の8(もりのえいと)のシンボルとなる大型木製遊具とキッズマウンテンを、設計から制作・施工まで一貫して担当いたしました。
この特別なキッズエリアがリゾートホテルにもたらした変化、次世代のリゾートビジネスの展望と施設の運営戦略について、ホテルの総支配人 上村明史様と管理部のマネージャー 中田健一様、WEB&マーケティングコミュニケーションズのスーパーバイザー 櫻井数馬様に、株式会社岡部の担当者(営業・小野、設計・正野、施工・石山)が、お話を伺いました。
リブランド後の圧倒的な集客効果と客層の変化
──まず、リブランドオープンされた時期と、キッズエリアを導入された経緯についてお聞かせください。
上村様:当ホテルは2024年4月1日にリブランドオープンしました。
私自身は2025年3月中旬に赴任したため、オープン当時は佐賀県のメルキュール佐賀唐津リゾートにおりました。キッズスペースの写真を目にして、お子様が喜びそうな遊具を多く備え、リブランドによるホテルの進化を感じたことを覚えています。まさかそのホテルに私が着任するとは思いもよりませんでした。
このキッズスペースは元々、宴会場や大型の会議室として利用されていたスペースをリノベーションしています。
中田様:実は私は結婚式をここで挙げました。まさかこのようなキッズスペースになるとは思いませんでした。
上村様:2024年4月1日、同時にリブランドオープンしたホテルは22軒ありましたが、この規模でお子様向けに特化したエリアを設けているのは八ヶ岳の当ホテルのみと、とてもインパクトがありました。実際に施設を訪れた際には、「キッズスペースが広く遊べる場が充実しており、これは、お客様が喜んでくださるだろう。」と、私自身が興奮したことを覚えています。
── オープンから約1年が経過し、現在のキッズエリアのご利用状況や、ご利用者様の反応はいかがでしょうか。
上村様:ありがたいことに、非常に好調です。リブランド以前は認知度が低かったものの、様々な販売チャネルでのプロモーションを強化した結果、リブランド後はキッズエリアを目当てにお越しになるお客様が多いという印象を受けています。
周辺エリアの観光を目的にホテルへお越しになる方も多くいらっしゃると思いますが、当ホテルの場合はホテル自体が目的地になっていることが特徴です。
年間を通してファミリー層が60%から70%を占め、特に土日祝日に関してはほぼ99%がファミリー層です。
── 観光ではなく、ホテルが目的地になるという効果を、施設に求めていたということでしょうか。
上村様:はい、おっしゃる通りです。ファミリー層の中でも、私たちは戦略的にターゲットを未就学児層(小学校入学前)に絞りました。土日祝日に限らず、平日にもホテルをご利用いただくという課題を解決する必要があり、平日に比較的旅行がしやすいのは、学校を休めない小学生以上のご家族ではなく、未就学のお子様がいらっしゃるご家族ではないかと考えました。結果、未就学のお子様をメインのターゲットとしたキッズエリアが需要にはまりました。
遊び場がリゾートビジネスにもたらすメリット
──キッズエリアがリゾートビジネスにもたらす具体的なメリットについて、詳しくお聞かせください。
上村様:メリットは大きく分けて二つあります。一つは先ほど申し上げた通り、確実にホテルが目的地になることです。
二つ目は、天候に左右されないという点です。私が着任して驚いたのは、梅雨のシーズンである6月など、雨の日に稼働が上がることです。首都圏から2時間ほどで来られるエリアなので、「どこか行こうか。でも雨だよね。どこへ行く?」という時に、室内で遊べる当ホテルが選定されやすくなります。また、近年の環境課題である、高温で外遊びが難しい夏場でも、室内施設なら安心して遊べます。
私たちは、「子どもは楽しいホテル、大人は楽するホテル」というコンセプトを掲げています。
【子どもの楽しさ】キッズエリアで夢中になって遊ぶ。
【大人のゆったり】ホテルが目的地なので、ホテル内でお子様が存分に遊び尽くすのを眺め、大人は朝夕のビュッフェ、ラウンジではお酒を嗜む、そして温泉に入って癒されるなどゆったりお過ごしいただけます。
このコンセプトを複合的に立証できているのが当ホテルだと考えています。例えば、未就学児の親御様をターゲットにした「森のラウンジ」(畳のラウンジ)を3階に作りました。ここでは大人たちが寛いでいる間に、お子さまは遊ぶことも可能です。さらにラウンジにはオセロや将棋といった昔から馴染みのあるおもちゃを置き、祖父母が孫に教え、その間両親はビールを飲んで楽をする、という「三世代での楽」も実現しています。
導入決定の背景と施設構築へのこだわり
──以前から「 ウェルカムベビーの宿」として認定があったとのことですが、今回さらに大規模なキッズエリアを設置するに至った経緯をお教えください。
上村様:当ホテルの立地は、関東圏や首都圏から2時間ほどで来られるエリアであり、東海エリアからも近く、観光土壌が仕上がっていることが大きな理由です。このエリアに対して投資をすることで、集客がしっかりとできるという見通しがあったからこそ、導入が実現したと認識しています。
─キッズエリアの具体的なコンセプトや、岡部にご依頼いただいたイメージはあったのでしょうか。
上村様:具体的なイメージはお打ち合わせをしながら、詰めさせていただきました。八ヶ岳という場所柄とお子様へのやさしさ、温もりを表現するため「木調でいこう」「お子様が存分に遊べる場所を作ろう」というところからスタートしました。
── 非常に大規模なスペースですが、運営面での課題や懸念点、またそれに対する対策はどのようにされましたか。
上村様:懸念点は二つありました。一つ目は、ファミリー層に特化しすぎることで、他の層が離れてしまう可能性があることです。これについては、先述した三世代をターゲットにした森のラウンジのように、ファミリー層をさらに細分化し、それぞれの需要に応えることでカバーできると考えました。ファミリー層は「未就学児層」「小学生層」「中学・高校生層」「三世代層」の4つのカテゴリーに切り分け、それぞれにフォーカスしてアプローチを始めています。
二つ目は、やはり遊具施設ならではの安全面の問題です。当施設に限らず、公共の公園などでも起こり得ることを想定し、岡部様に依頼してクッション材を置くなど、危険な箇所を潰していく形で、安全対策を常に更新していきました。その結果、2025年度は大きな怪我などの事例はありません。
ちなみに、夢中になって遊んでいるのはお子様だけではありません。以前、つい夢中になって我を忘れてしまう大人の方もいらっしゃいました。
リゾートビジネスの展望と次の一手
── 新しい施設を導入され、集客において絶大な効果を上げていらっしゃいますが、今後のリゾートビジネスの展望についてお聞かせください。
上村様:このキッズエリアは、岡部様をはじめ、関わってくださった方のおかげさまで、お客様に喜んでいただける施設になったと感じており、この施設を目的にホテルへ宿泊してくださる方もいらっしゃいます。この成功事例から、ファミリー層へのアプローチについてグループ内でも議論を重ねております。
──今後の戦略と次の一手について、どのようにお考えですか?
上村様:当ホテルが今後目指すのは、「常に新しくなるホテル」であることです。これはリピートの要因になると考えています。
まず、現在は使用していないスペースの徹底活用と施設の更新です。以前は宴会場だったスペースを、私が赴任してからラウンジや卓球ルーム、足サッカー(フットボール)ルームなど、お客様に必要とされる施設に有効活用しています。今後も既存のキッズエリアの刷新や、スペースの新たな活用について、岡部様とタッグを組みながら取り組んでいきたいと考えています。
さらに、ターゲットの拡大とコンテンツの多様化も進めます。キッズエリアがメインのコンテンツであることは変わりませんが、敷地外の遊歩道なども含めて異なる楽しみ方を提案することで、複合的に集客を図ります。例えば、小学校高学年や中学生層への対応として、漫画を3,000冊置くといった取り組みも始めています。
また、「杜の8」の空いているスペースにも、岡部様に新たな遊びの要素を取り入れていただくことを検討しています。
櫻井様:今後は、SNSなどを通じて岡部様と連携しながら情報発信をしていけたらと思っています。
一緒に発信していくことで、双方の取り組みをより多くの方に知っていただき、相乗効果を生み出していければと考えています。
空間をセグメントすることで多様なターゲットに対応
── 今後の集客の目標などはありますか?
上村様:八ヶ岳に来たら「グランドメルキュール八ヶ岳リゾート&スパ」というイメージを確立し、地域で最も強いホテルを目指したいと考えています。
また、私が考える、リゾート全体を多様な顧客層にご満足いただくための空間活用戦略は、建物を「縦軸と横軸」に切り分けるという考え方に基づいています。
ホテルが単に観光のついでに利用される場所ではなく、ホテル自体が目的地となる状況を実現するためには、建物というハード面において、このような戦略的な工夫が必要不可欠だと捉えています。
── 「縦軸と横軸」による空間戦略とは、どんなものですか?
上村様:縦軸と横軸によるホテル空間のセグメント化です。
まず、ホテル全体を構成する建物において、「横軸」によって区分けを行います。これは、フロア(階)で施設を分けることを意味しています。例えば、静かに過ごせるエリアと、アクティブに楽しめるエリアをフロアで区分する、といったイメージです。
その上で、フロアで区分した空間に対し、さらに「縦に軸を入れる」ことで、その空間の役割やターゲット層を明確に定義します。
この二つの軸を用いたセグメント化の結果、「このスペースはファミリー層」「このスペースは夫婦カップル層」といった形のイメージを設定することが可能となると考えています。
全てのホテルは「目的地」となれる可能性を秘めている
── リゾート全体として、建物を「縦軸と横軸」に切り分けるというお考えは、今後の運営のヒントになりそうです。
上村様:そうですね。この戦略の最大の目的は、ホテルの敷地面積の大小に関わらず、空間を多角的に切り分け、「様々なターゲット層でも楽しめる」という感覚を作り上げることです。
ホテルの敷地面積に応じて、スペースを縦横に切り分け、異なるターゲット層でも楽しめるような空間を作ることは、同タイミングでリブランドオープンした22ホテルでも展開できる可能性を秘めていると考えます。
今後は、「八ヶ岳に来るならグランドメルキュール」という状態を目指して、さらにお客様の満足度を高めるサービスを展開してまいります。
岡部様にもぜひご協力をいただきたいと思っていますので、今後もよろしくお願いいたします。
小野・正野・石山:長時間にわたり、貴重なお話ありがとうございました。